茅野高校体育コース H9年度卒業 藤森 麻衣さん
<シャトルの製造方法について>
シャトルの製造方法をメーカーに問い合わせてみて以下のことがわかりました。シャトルの番手の違いで飛距離が違うのは、それぞれ作りが少しだけ違うということです。どこが違うかというとそれは「羽根の先端(直径)の広がり」と「コルクや羽根の重量全体」です。
羽根の先端(直径)の広がりを狭めたり広げたりすることで空気抵抗を増減させて飛びを調整します。狭めることでより飛びやすく、広げることでより飛びにくくしています(羽根の先端の直径は58〜68mmの範囲)。コルクや羽根の重量全体調整は、コルクを重くしたら羽根を軽くし、コルクを軽くしたら羽根を重くするなど0.1〜0.2gの範囲で重量を増減します(全体重量は4.74g〜5.50gの範囲)。
シャトルを1つ作るのには、これらを含む32の行程があるそうです。わずか0.1g単位で飛びの違うシャトルを作るのは大変な重労働で、しかもそのほとんどが手作業ということです。さらに私が驚いたのは完成したシャトル1つ1つをを精密な機械で試打をして飛距離を測定し、最終的に番手を決定していることです。これらの基準をクリアしたものが私たちが普段使っているシャトルなのです。
<実験方法について>
茅野高校バドミントン部では、12月中旬での練習に使用しているシャトルの番手は4番です。4番のシャトルを使用するときの適正温度は17〜23度です。しかし、12月中旬の茅野市の平均気温は約6度です。本来気温が6度の場合は7番のシャトルを使うのが適しているはずですが4番のシャトルで飛距離がちょうどいいのです。なぜ茅野市では適正気温の違う番手を使って飛距離がちょうどいいのかという疑問を持ちました。そこで、以下のような方法で実験を行いこの問題を検証してみることにしました。
1.番手による飛距離の違いを出すために、4番と5番のシャトルを試打しそれらの平均値を求めた。
2.番手による飛距離の違いから、7番のシャトルの飛距離を予想し4番の飛距離と比較した。
3.この原因は何かを考察した。
実験日 平成9年12月
場所 茅野高校体育館(海抜830m)
気温 7度
試打は競技経験、指導経験の長い熟練者の顧問教諭が正しい試打を行った。
バドミントンコートは縦13.400mでシャトルは試打で12.41m〜12.87mの範囲に入るものが適正とされている。
<結果と考察>
4番の平均飛距離 12.50m
5番の平均飛距離 12.85m
このことから1番手の違いで35cmの差があることがわかった。したがって6番の飛距離は13.10m、7番の飛距離は13.40mであることが予想される。適正な飛距離は12.41m〜12.87mの範囲であることから6番7番の飛距離では不適切で4番が妥当だということがわかった。
この結果から、なぜ茅野市では適正気温の番手では不適切なのかを考えました。この原因は海抜の違いです。海抜が上がるにしたがって空気が薄くなり空気抵抗が少なくなります。よって海抜830mの茅野高校では3番手小さいシャトルでちょうどよかったのです。また、海抜830mで3番手小さいを使うことが妥当だとすれば、4番と7番の飛距離の差から、海抜100mにつき9cm飛距離が伸びることが予想されます。
<まとめ>
非常に微妙な重量や直径の増減で飛距離を決めていること。完成したシャトルの1つ1つを精密な機械で飛距離を測定し番手を決定していること。また、ほとんど手作業で32もの行程を経たのもが普段私たちが使っているシャトルであるということがわかりました。
実験の結果から1番手の違いで35cm飛距離が変わります。シャトルは気温だけでなくその場所の海抜を考えて使い分けなくてはならないのです。競技レベルを向上させるためにもシャトルの選択はバドミントンにとってとても大切なことと理解できました。私たち競技者にとって競技力向上のためには普段の練習から常にシャトルの飛距離を意識して番手を選定し、練習に生かしていくことが大切なコンディショニングの1つなのです。(藤森麻衣)
<「海抜300mにつき1番手小さくする」という目安について>
シャトルは気温1度の違いで4〜5cm飛距離に差が出ます。番手は5度刻みで設定されているので、1番手の違いで20〜25cm飛距離に差が出ます。
実験の結果からは、海抜100mにつき9cm飛距離が伸びることが予想されるので、海抜200m〜300mにつきマイナス1番手はほぼ妥当といえる。理想は海抜200mにつきマイナス1番手かと思われるが600m超の地域の現実的な供給の面を考えた場合、マイナス3番手ということになり供給が困難である。従って以上のような面から「海抜300mにつき1番手小さくする」という目安は妥当であると考える。ただし、適正番手とは海抜0m地域で概ね、夏は2番、春秋は3〜4番、冬は5番を使用するものとする。高海抜地域に住む我々はこのことを常に意識し、メーカーに要望していく必要がある。(新井研二)